公開シンポジウム「エネルギー安全保障:欧州の経験とアジアへの示唆」
INFORMATION
本公開シンポジウムは、①科研費基盤研究(B)「コンステレーション理論に基づくウクライナ危機とエネルギー安全保障の総合的研究」の成果を社会に還元することを主たる目的としている。同時に、①の研究成果から新たに生まれた新たな研究プロジェクトである、②2019年度立教SFR共同研究「欧州におけるEVシフトと生産?インフラ?ネットワークの再構築と日系企業への影響」、③経済研究所プロジェクト研究「EVシフトと日EU経済関係-生産?インフラ?ネットワークの再構築」の成果の一端を組み込んでいる。
第Ⅰ部「日ロエネルギー協力に関する緊急講演会」において、ロシアの資源開発に詳しい、あるいは実際に開発に携わってきた方々による講演及び討論会を開催する。次いで、これまでの共同研究の成果として、第Ⅱ部「異なるエネルギー?シナリオ」、第Ⅲ部「異なる安全保障認識」、第Ⅳ部「Implications for Energy Security in Asia(アジアのエネルギー安全保障への示唆)」(英語セッション、通訳なし、質疑は日本語も可)を実施する。
講師
元独立行政法人石油天然ガス?金属鉱物資源機構主席研究員
本村 真澄 氏
講演「ロシアの石油?天然ガス資源について」
石油公団ロシア中央アジア室長、オックスフォード?エネルギー研究所客員研究員を経て現職。『石油ガス大国ロシア』(群像社、近刊)等。
日揮株式会社ヤマル?プロジェクト担当
植木 孝太 氏
講演「ヤマル?北極海航路について」
「世界の果て」と呼ばれる北極圏に位置するロシア?ヤマル半島の液化天然ガス(LNG)プラント建設に従事し、ロジスティックを担当し、北極海航路開発に取り組んでいる。
国際協力銀行JBIC石油?天然ガス部次長兼第3ユニット長
加藤 学 氏
講演「JBICとロシア資源プロジェクト」
日本輸出入銀行、国際協力銀行モスクワ駐在等を経て、現職。『ビジネスマン—プーチン』(東洋書店新社、2018年)。
元三菱商事株式会社欧州ロシア石油天然ガス事業部シニアアドバイザー
酒井 明司 氏
講演「日ロビジネスの経験から」
主にプラントビジネスを経て、2度のモスクワ駐在。『ガスパイプラインとロシア』(東洋書店、2010年)、『国策企業ガスプロムの行方』(群像社、近刊)等。
一般財団法人日本エネルギー経済研究所企画事業ユニット主任研究員
小森 吾一 氏
第Ⅰ部:講演「アジアの視点から」
第Ⅱ部:講演「アジアのエネルギー?シナリオとロシア」
同研究所アジア太平洋エネルギー研究センター主任研究員を経て現職。共著『ロシアの政治システムの変容と外交政策への影響』(日本国際問題研究所、2013年)等。
東京国際大学国際関係学部教授
武石 礼司 氏
講演「エネルギー?シナリオとエネルギー安全保障への示唆」
株式会社アラビア石油、日本エネルギー経済研究所、石油開発情報センター、富士通総研経済研究所等を経て、現職。『やさしく石油経済』(メディアランド、2015年)、『東南アジアのエネルギー』(文眞堂、2014年)等。
本学経済学部教授
蓮見 雄
講演「EUvs.ロシア:異なるエネルギー安全保障戦略」
一般社団法人ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所副所長
服部 倫卓 氏
講演「ユーラシア連合の共同エネルギー市場」
ベラルーシ共和国日本大使館専門調査員を経て、現職。編著『ウクライナを知るための65章』(明石書店、2018年)、単著『不思議の国ベラルーシナショナリズムから遠く離れて』(岩波書店、2018年、オンライン)等。
筑波大学大学院人文社会系准教授
東野 篤子 氏
講演「EUの東方パートナーシップ(EaP)とその安全保障認識」
英国バーミンガム大学Ph.D。OECD日本政府代表部専門調査員、広島市立大学国際学部准教授などを経て現職。共著『現代ヨーロッパの安全保障ポスト2014:パワーバランスの構造を読む』(ミネルヴァ書房、2019年)共著『欧州統合史』(ミネルヴァ書房、2019年)等。
東京大学先端科学技術研究センター特任助教
小泉 悠 氏
講演「ロシアの安全保障認識」
外務省国際情報統括官組織専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員を経て現職。2011年公益財団法人未来工学研究所研究員兼務。『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版、2019年:サントリー学芸賞)、『軍事大国ロシア』(作品社、2016年)等。
元毎日新聞社モスクワ支局長、元日本大学教授
石郷岡 建 氏
講演「ロシアと欧州連合との経済統合の結果とコンステレーション理論」
国立モスクワ大学物理学部天文学科卒業。毎日新聞社カイロ中東特派員、ハラレ(ジンバブエ)アフリカ特派員、ウィーン東欧特派員、モスクワ支局長を経て、日本大学教授に就任。共著『北方領土の基礎知識』(東洋書店新社、2016年)、単著『ヴラジーミル?プーチン』(東洋書店、2013年)等。
上智大学外国語学部教授
湯浅 剛 氏
講演「ユーラシアにおける安全保障認識」
防衛研究所主任研究官。広島市立大学広島平和研究所教授を経て、現職。『現代中央アジアの国際政治—ロシア?米欧?中国の介入と新独立国の自立』(明石書店、2015年)等。
早稲田大学国際教養学部准教授
Elena Shadrina(エレナ シャドリナ) 氏
講演“Does Russia have an Energy Strategy for Asia?”
明治大学大学院ガバナンス研究科特任准教授を経て、現職。共著“Institutionalisation of the Common Gas Market in the Context of Institutional Evolution of the Eurasian Economic Union” in Energy Policy: Perspectives, Challenges and Future Directions/ ed. by K. J. Sreekanth, Nova Science Publishers, Inc., June 2018等。
独立行政法人石油天然ガス?金属鉱物資源機構調査部調査課(ロシアCIS担当)(併)ロシアグループ政府間協議対策チーム担当調査役
原田 大輔 氏
講演“Behind the acceleration of the Arctic development in Russia and the utilization of the Northern Sea Route; Challenges facing Russia and importance for Japanese energy security”
同機構モスクワ事務所副所長、資源エネルギー庁出向、同事業部ロシアチームサブチームリーダー(併)調査部課長代理等を経て、現職。「ロシアが急速に進めるガス供給ルート多様化の背景に迫る」『石油?天然ガスレビュー』(2019年、第53巻第4号)等。
公益財団法人環日本海経済研究所調査研究部長?主任研究員
新井 洋史 氏
講演“Regional Cooperation and Energy Connectivity in Northeast Asia”
Northeast Asian Gas and Pipeline Forum(NAGPF)事務局長、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所名誉教授。編著『ロシア企業の組織と経営』(日本評論社、2018年)等。
詳細情報
名称
内容
開会挨拶と趣旨説明(10:00~10:10)
蓮見 雄「今、なぜ日ロエネルギー協力を論じるのか。」
【第Ⅰ部】日ロエネルギー協力に関する緊急講演会(10:10~12:10)
本村 真澄 氏(兼司会)、植木 孝太 氏、加藤 学 氏、酒井 明司 氏、小森 吾一 氏
全体討論
【第Ⅱ部】異なるエネルギー?シナリオ(13:00~15:00)
蓮見 雄
趣旨説明「エネルギー安定供給の客観的条件と安全保障認識のあいだ」
武石 礼司 氏、蓮見 雄、服部 倫卓 氏、小森 吾一 氏
討論
【第Ⅲ部】異なる安全保障認識(15:10~16:50)
東野 篤子 氏、小泉 悠 氏、石郷岡 建 氏、湯浅 剛 氏
討論
【第Ⅳ部】Implications for energy security in Asia(アジアエネルギー安全保障への示唆)(English17:00~17:55)
Elena Shadrina 氏、原田 大輔 氏、新井 洋史 氏
全体の質疑?討論(17:55~18:40)
対象者
申し込み
- 事前申し込み 要
- 参加費 無料
以下のメールアドレスからお申し込みください。
20200216@rikkyo.ac.jp
主催
共催
後援
備考
エネルギー安全保障を論じていながら、(1)(2)の間には大きな認識の齟齬がある。この認識の齟齬がウクライナ危機を契機とする欧米とロシアの対立の背景にあることを、「コンステレーション理論」は示唆している。
同時に、エネルギーを安定的に確保するためには、消費国と供給国が対話を積み重ね、(1)と(2)のエネルギー安全保障認識の齟齬を互いに意識し、双方がエネルギー輸出入先とエネルギーミックスの多角化(diversification)を進めつつ、エネルギー安全保障に関する共通認識を形成していく長期的な信頼醸成措置が必要である、と考えられる。
ロシアに多くのエネルギーを依存してきたEUが選択したが、まさにエネルギー輸出入先とエネルギーミックスの多角化(diversification)であり、それは上記の②③の研究課題の核をなすEVシフトを含む包括的な気候変動?エネルギー政策であった(②③の成果の一端は、主に下記の第Ⅱ部に反映している)。
近年の北極海におけるヤマルLNG(液化天然ガス)の開発、北極海航路、Arctic2LNG開発への日本企業の参加は、対ロシア経済制裁下でも、エネルギー協力が可能であることを示す実例であるとともに、ロシアのアジア市場への進出と日本のエネルギー安全保障の将来に影響を与える出来事である。
※当日、会場で関連書籍をご購入頂けます。